CEDEC2019 フォトグラメトリーとプロシージャルを用いた最新ハイエンドゲーム3DCG背景制作手法
今年はタイムシフト配信でCEDEC2019をチェックしています。
あとから見たものは感想をまとめようと思っているんですが、
個人的に"推し講演"があったので、一足先にまとめようかと。
こちらです。ぜひ見てください。
「フォトグラメトリーとプロシージャルを用いた最新ハイエンドゲーム3DCG背景制作手法~ハイエンドゲーム開発の経験がない会社がいかにしてそれらを生み出したか~」
おもに背景作成に携わる新人さん~ベテランのまでオススメの内容になっています。
CG業界を目指す学生さんにもオススメ。
- 講演で印象的だったこと -
・グラフィックのレベルを上げるために、やるべきことを愚直に積み重ねる
・PBRをしっかり学ぶ
・知っていると出来るは違う
・根本的なセンスを磨く/アートの底力をあげる
・リファレンスがものをいう世界
・アートのセンスを磨くためにカメラに慣れ親しむ
・良いリファレンスを見極めれる目を鍛える
・うまく使おう
・根拠なき自信は大事
・絶対にやり遂げるという気持ちを持つだけでプロジェクトの半分以上はうまくいったもの同然
以下は私なりに備忘録も兼ねてレポートとしてまとめたものになります。
※青文字は個人の感想です。
- 講演の概要 -
Cygamesさんが初めて挑んだハイエンドの背景グラフィック作成について
下記を中心に語られていました。
・取り組んだワークフロー(フォトグラメトリー・プロシージャル)
・苦労されたこと
・失敗談、失敗をどう乗り越えていったか
・当たり前のことをちゃんとやろう
・自分たちなりの特色の出し方
・背景制作のマインド
余談ですが、登壇されていた方が20年も背景制作に携わる大ベテランのアーティストさんで、すごく生き生きと話されている姿が印象的でした。
私も背景制作は将来ずっと続けたいですし、こんな風に活力一杯でいたいなぁ
今回、話の題材となったのはCygamesさん開発中の「Project Awakening」です。
まずAAAタイトルを作るにあたっての目標を
「フォトリアルなゲームをつくろうぜ!!」とし、ここでフォトグラメトリー(以下:フォトグラ)を取り入れた背景制作に挑戦されたということです。ロケハンも頻繁に行かれたとのこと。
フォトグラの以下のメリットに注目されていました。
(1) 圧倒的な説得力
…写真から得られる情報量は、1から手で書くのと比べると
短時間で説得力が高いアセット作成ができる
(2) 統一感がとれる
…アーティスト個々の手癖によるクオリティのバラつきを防げる
しかしコンセプトアートを振り返れば目指すは「見たこともないような、壮大なファンタジー背景」であり、写実的なアセットを頻繁に加工する必要があり、コストもかさばり限界を感じたとのこと。(ロケハンも海外などで出費が激しかったそうです)
ここで写実な絵作りを短期間で行うために早い・安い・上手いの三拍子がそろった
Houdini等のプロシージャルツールも取り入れますが、結果は芳しくなかったそうです。この2点を見ていて、0から1を生み出すのが難しいのかな、と思いました。
つまり0(=原点)は「何を魅せたいか」や「何を伝えたいか」など根本の部分だと思います。
ここで技術に偏りすぎていたことに気づき、一度仕切りなおします。
「魅力的な背景とはなにか」を改め、背景の最大の魅力である
遊んだ人にこの世界に入り込みたい!という没入感を大事にしよう、と原点に返ったとのこと。焦り禁物。
ここで話題はABC理論に。(こんなのあるんですね)
A = 当たり前のことを
B = バカにせず
C = ちゃんとやる
こういうのって自分は例えば絵だと、デッサンをやって初めて"当たり前のこと"って大事やなと学んだので、身に沁みます。
背景制作のあたりまえを定義。
・グラフィックの品質を愚直にあげる
・PBRをちゃんとやろう
…知っていると出来るはちがう(耳が痛すぎる)
チーム内で現物を模写したり、勉強を重ねた
・フォトグラメトリーのレベルアップ
…取材先の厳選。汎用的に使えるモチーフを多く作ることに専念。
ダイナミックな自然地形は日本にもある(東北おすすめ)
・カメラのスキルアップ
…被写体との距離、現場での適正露出を瞬時に割り出す能力など
・Houdiniによるプロシージャルモデリング
・イメージボードをベースに
・レンガの配置などHoudiniが得意とする数式による制御で行い、
アーティスト個人の手癖に左右されない絵作り
・根本的なセンスを磨く
・カメラに慣れ親しむのが最適だと判断
…よいリファレンスが何かを選べるようになる、構図やライティングなど(絵作りのレベルもあがる)
カメラの勉強会を社内で行ったり、写真部を作って退社後にみんなでいろんな風景を撮りに行ったり、ポートレート撮影も行った(カメラに詳しい人が講師担当)
・自動化を疑うこと
・常識だと思われたフローを一度は疑う
例:購入したアセットなどで、PBRの設定が適切にされていないものもある
この当たり前を見直してから、制作のバランスは格段に良くなり、軌道に乗ったとのことです。
これに加えて"私たちなりの特色"も考えます。
Cygamesさんが強いアートの力+今回取り入れたテクノロジーを足してバランスを取り、相乗効果を生むようにしていく設計だと語られていました。
…一見全部フォトグラで作った?と思わせる高いレベル
↓中身は、実はけっこうプロシージャル使っている
プレイヤーが一番見る視点…フォトグラのみ
そこそこ見える視点…フォトグラ+プロシージャル
あまり見えない視点…プロシージャル(Houdiniモデリングのみ)
・アート面では、ベテラン勢の経験から裏打ちされるアセット配置の工夫
…これはリファレンスがものをいう世界
シルエットから決める、3Dではポリゴン感をなくす(直線ブレイクと命名)、大中小の法則
最後は、マインドのお話。
失敗しても諦めない(むしろ言いこと)、根拠ない自信をもって挑もう、ゲーム業界にはいったときの気持ちを思い出して楽しんで作っていこう…など制作に臨む姿勢を語られていました。大事ですね。出来れば2年前くらいに聞きたかった。
まとめは下記で締めくくられました。
・地力をあげる
・カメラによってアートのセンスをあげよう
・絶対いいものを作るというマインド